つぶやきかさこ

かさこが普段の生活の中で感じたこと、思ったことを、独り言のようにつぶやくコーナーです。
どんどん書き加えられていきますので、また見に来てください。意見・感想のある方は掲示板をご利用下さい。

・2004年10月31日 おいおい、日本の政府、マスコミは大丈夫か?〜イラク人質大誤報事件
今日、そして昨日も、「アジア人らしき遺体発見、人質の香田さんか?」
というニュースを延々やっていたが、私は絶対に香田君ではないと思っていた。
だって、わざわざネットで声明発表して世界にアピールしている連中が、
せっかく人質を殺すというメインイベントを、
どこにも発表せず、勝手に殺して、しかもどこにも教えず、
勝手に遺体を捨てるなんて、絶対にありえない話。
遺体発見での事件「解決」はありえないですよ。

信じられないのは、今日のニュース。
ふたを開けてみれば身体的特徴はまったく違う別人にもかかわらず、
「香田君の可能性がある」と政府が騒ぎ、
そのバカ騒ぎを冷静にみるべきマスコミまでもが「号外」を出す始末。
天下の朝日新聞の夕刊見出しも「香田さんか 遺体発見」。
もう夕刊が配られる頃には別人ニュースがネットに流れているのにね。

政府、マスコミ。大丈夫?
今まで何やってたの?
イラク情勢やこれまでの人質事件をみれば遺体発見という形はありえないでしょう。
ここまでガセネタで惑わされてしまう日本。
私はちょっと信じられないですよ。
香田君がこの時期、イラクに行ってしまったことより、
こんなガセ情報で号外まで出してしまうマスコミ、政府の方が信じられないですよ。

あんたら、落ち着きなさい。
香田君死亡ニュースを一刻も早く伝えたいなら、
ネットをチェックすることでしょう。
彼らは香田君を殺すなら、絶対ネットなりなんなりで発表するでしょう。

しかもマスコミは「政府が情報を混乱した」と政府のせいにしてるけど、
あんたら、かりにもマスコミでしょ。
政府の発表を鵜呑みにして伝えるだけなら、マスコミいらんでしょ。
自らの存在を否定しているようなもんだよ。

あんたら、イラクで遺体が発見される度に、号外だして、
「香田さんか」と報じる気だろうか。
こんな情けない、こんなイラク情勢にうといマスコミや政府。
私はほんと情けなくて仕方がないよ。

大丈夫か、日本は。

※9.11から4年たって、はじめて犯人がわかった!
お気づきだろうか。マスコミは今まで「ビンラディン氏」と表記していたが、
はじめて今、ビンラディン「容疑者」という記載になった。
彼がビデオメッセージで自分が犯行を指示したと「はじめて」明らかになったからだ。
裏を返せばね、これまでの4年間、
アメリカは「対テロ戦争」といってアフガンを殲滅し、
ラディン君にすべてのその責任を負わせていたけど、
決定的証拠はなかったってことでしょ。

さてと、ビンラディンがやっと「容疑者」と記載されるようになったのだから、
大量虐殺罪のブッシュ大統領も、そろそろ「ブッシュ容疑者」という記載に変えたらどうかね。
そしてアメリカ国民は大量虐殺犯罪者に投票した共犯者として刑務所にぶちこまれ、
これまで苦しめてきたイラク人から、お返しとばかりに、刑務所で虐待されたら、
やっと自らが犯した罪を認識するだろう。

・2004年10月30日2 メッセージ
9.11の事件(米同時テロ)から4年目に入るのに、ブッシュはいまだに、米国民を間違った方に導いている。
そのため、こうしたこと(テロ)が(今後も)繰り返される。
我々が米国を攻撃したのは、自由を敵視するからではなく、我々の自由を取り戻すためだ。
1982年のイスラエルのレバノン侵攻を米国が容認したことで、塔(高層ビル)を攻撃する考えが浮かんだ。
米国の高層ビルを同じように破壊、同じ苦しみを味わわせてやろうと思った。

(われわれは9.11の)全作戦を20分以内に遂行することで了解していた。
(にもかかわらず)ブッシュ政権は事態を感知するまでにその3倍の時間がかかった。
(あの段階で)最高指導者が5万人もの人々をツインタワーに残しているとは思いも寄らなかった。
※参考:9.11テロ勃発時、ブッシュは小学校の朗読授業に参加していて、
側近がテロを伝えたにもかかわらず、7分間もそのまま朗読会に参加していた。(映画「華氏911」)

あなた方の安全を握るのは、ブッシュでもケリーでも、アル・カーイダでもない。あなた方自身なのだ。
あなたたちが我々の安全を脅かす限り、我々もあなたたちの安全を脅かす。
我々の安全を痛めつけない国は、安全でいられる。


さて、これは誰の言葉かおわかりになるでしょうか。
アルカイダの指導者ビンラディン氏のメッセージです。(10/29「アルジャジーラ」で放映されたビデオメッセージ)
テロリスト=悪みたいな図式で捉えられるけど、本当にそうなのか。
私はこのメッセージを聞いて、テレビ演説などでも相当とちくるった発言をしているブッシュより、
まっとうな世界的指導者であると思ってしまう。
私もブッシュへというより、ブッシュに投票するアメリカ国民にこれと同じメッセージを伝えたいね。
それとブッシュを支持する小泉政権を支持する日本国民にもね。

テロは何も一方的に行われたものではない。
アメリカ主導の一方的な「正義」によるアラブ圏での横暴ぶり。
それが根強い反米感情を根付かせ、9.11ほどの事件を起こさせる反発力を生んでしまった。
ビンラディンのいうように「我々の安全を痛めつけない国は安全でいられる」。
別に無差別に攻撃している極悪非道人ではない。
世界各地で「正義」の名のもとに、自国権益のために、大量虐殺を繰り返してきた国に行われていることだ。
そんなことしなけりゃ、そんな指導者を国民が選ばなければ、9.11の悲劇は起きなかった。

アメリカの大統領選挙は4日後。
イラクでは相変わらずアメリカ軍により虐殺が続けられている。
必ずその報いは返ってくる。
仮にビンラディンがつかまったとしても、アメリカに憎しみを覚える大勢の人々がいる限り、
第二、第三のビンラディンはいくらでも出てくる。

アメリカが問われている。
そしてもし日本がアメリカの「真の友人」であるならば、
ジャイアンのばかげた行動を注意すべきだろう。

アメリカが虐殺を続ける限り、アメリカはもちろん、世界各地で、
そしてアメリカを支持している日本にも、テロが起きてしまうだろう。

テロが起きないようにすることは、テロに屈することではない。

・2004年10月30日 ファッション調査
秋葉原駅電気街口改札駅前。平日午後19時過ぎ。
待ち合わせしている時間より10分あまっていた。
私は改札前で迷った。
もう駅に入ってしまうか。それともコーヒーでも飲むか。
その隙をつかれた。
30歳前後の私服の女性が話しかけてくる。
「あの、すみませんが、ファッション調査をしているものですが、
調査にご協力いただけないですか?」
普段なら無視して通り過ぎただろう。
しかし10分時間が余っているということが、私の歩足を緩めてしまった。

私はいぶかしげな視線を向ける。
こんなおかしな現代社会だ。
どんなトリックが仕組まれているかもわからない。
知らない人から街角で声を掛けられ、その誘いにのる。
そんな恐ろしいことはない。

いぶかしげな視線に気づいているのか、慣れているのか、
つとめて明るく、つとめて自然に、そしてつとめて馴れ馴れしく、
まるで親しい友達のように話しかけてくる。
勧誘は女性に限るなと思う。
女性だと警戒心が幾分緩む。

「ファッション会社につとめているものでして、ファッションについての調査をしているので、
ご協力いただけませんか」
私はどこかに連れ込まれることを心配し、
「ここ(道端)でいいのですか?」と聞くと、「もちろん」とにこやかな笑顔を向ける。
その時、私の頭の隅をかすめたもの。
ちょうど10分程度の暇つぶしになる。
つぶやきのネタになるかもしれない。
どのようなからくりが行われるか見てみたい。
という3点だった。

私がでも引っかかっているのは、この私に「ファッション」調査である。
ご存知の方も多いかもしれないが、私は服装に気をつかわない。
清潔であれさえすればいい。動きやすければいい。
私はほぼ毎日同じ格好をしている。
服を買うことは皆無に近い。
それは「ファッション会社の調査員」なら、私がその調査対象として適切でないことぐらいわかるはずだ。
「ファッション調査」といいつつ、何か別の押し売りでもするのではないかと警戒しながら、
彼女の話を聞くことにした。

「ふだんはどんな格好をしていますか?」
「ジーンズにTシャツにYシャツ」
「冬はどんな格好をしていますか?」
「Yシャツにセーターにコート」
「あっ、コートとか着そうですね」
「そうですか」
「ジャンバーとかではなくコートなんですね」
「はい」
それは重要なことらしい。

「月に自分で自由に使えるお金はいくらぐらいですか」
「5万円ぐらい」
「服にはどのぐらいお金をかけますか」
「ほとんど買わない」
「(苦笑)なるほど。何か服装で気をつかっていることは?」
「極力、金を使わない服装」
「(爆笑)なるほど!そうですよね」
彼女はここで気づいたのだろう。
私にファッション調査をしてしまったことが間違っていたことを。

「女の子にどんな格好してほしいですか?」
難しいこというな。
「見えそうで見えないけどやっぱり見えるみたいな格好」と思い浮かんだが恥ずかしいので口をつぐむ。
「ちょっと質問が難しいですか?」
「ええまあ」
「好きな芸能人は誰ですか」
このような質問を受け、私はいままで答えがなくとまどっていたのだが、
社会生活が長くなると、会話を弾ませるために何か答えを用意しておくべきだということに気づき、
これまではずっと「昔の華原朋美」と答えていたが、
随分もう昔の人になってしまうので、最近は「松浦亜弥」という答えを用意している。
だから私は彼女の質問にすばやく答えることができた。
それが、勘違いを生んだらしい。

「あやや!ですか」
「ええまあ」
「なるほど。服にお金をかけずにためて、コンサートへ行く!みたいな感じですか?」
私には「あやや」と「コンサート」がつながっているとは思わず、
私の脳裏にはオークションで金出してでもミスチルのコンサートには確かに行くな、
ということを思い浮かべていたので、「はい」と答えてしまう。
多分、このとき、彼女は「秋葉原駅で調査・・・オタクが多いはず・・・あやや・・あやや追っかけ」
みたいな図式を私に当てはめたのだった。

「趣味は何ですか」
「旅行」
「ほかには」
「カメラ」
「なるほど。ほかには?」
「ほかにはないかな」
「あとは、あややのコンサートか!」
「いや、あややのコンサートに行ったことはない」
やっと誤解がはれる。

あややと答えたのは秋葉原という場所柄、間違っていたのかもしれない。
「松嶋奈々子」とか当たり前の答えをしておけばよかったと後悔する。
何かこの調査に落とし穴があるのか。
名前とか生年月日とかは絶対書くまいと思っていたが、
「あややオタク」という疑いがはれた途端、私は解放された。
「ご協力、ありがとうございました」
彼女は再び次の獲物を求めて電気街を練り歩く。

なんだかちょっと苦笑。

・2004年10月29日 さ迷える若者を増やさないための教育改革〜かさこ内閣
イラクで人質になった香田君は、確かに彼自身のさまざまな至らない点で、
(今日、報道されたように、肌を隠す習慣のあるイスラム圏で、
半ズボン姿で歩いていたために外国人だとすぐわかり拉致されたとのことなど)
自業自得ともいえる運命を辿ることに同情の余地はないが、
それにしてもこのような若者を生み出してしまう日本社会そのものの変革がない限り、
第二の香田君や第二の高遠さんなどが出てきてしまうことだろう。
再発防止のため、そして今を生きる日本人が、
無目的にイラクをさ迷わないよう、私なりの改善提案をしたいと思う。
将来、私が内閣総理大臣になったら実現するが、
ぜひもっと前に、実現をする担い手が現れて欲しいと願う。

・教育改革
英語の文法だの歴史の年号だのくだらん暗記授業を撤廃し、
中学生または高校生で下記のことをしっかり教えるべきだ。

1.社会保険、国民保険とは何か
2.任意で入る保険とは何か
3.年金の仕組み
4.所得税、住民税、消費税など税金の仕組み
5.クレジットカードの使い方と注意点
6.雇用保険とは何か
7.たばこ、酒、ドラッグ等の身体に与える影響
8.交通ルール(歩きながらの携帯、Gメン歩き、歩きたばこなど)の再確認
9.競馬、競輪、パチンコなどギャンブルについての基礎知識&注意点
10.正しい避妊の仕方
11.風俗産業の仕組み
12.人命救助、応急処置の仕方
13.ボランティア訓練
14.世界のタブーと宗教の違い
15.インターネット使用の注意点
16.訪問販売の撃退法
17.天災時の行動の仕方
18.少年法と刑法(犯罪について)
19.株取引の仕組み
20.ゴミの正しい出し方
21.病気についての正しい知識
22.個人旅行の仕方
23.サラ金と自己破産
24.肥満とダイエット
25.食品についての正しい知識
26.広告の見方
27.世の中にあふれる資格の紹介
28.世の中にあふれす職業の紹介とそれぞれの業界事情
29.住宅の購入の仕方
30.確定申告の仕方


きっとまだまだあると思う。
学生がしらけてしまうのは、興味や好奇心は旺盛なのに、
学校の授業は実態社会とかけ離れた、試験のための勉強や建て前ばかり。
きちんと社会の仕組みを、社会に出て直面する負の部分を見つめ、
興味がある若いうちに、正しい知識を教えてあげることで、
犯罪防止、健康維持、トラブル回避など、今後の人生に大いに役立つはずだ。
「それは親が教えるべきだ」とかいうかもしれないが、
アホな親が多いから親だけに頼るのは危険。
義務教育制度があるのだから、親の資質や経済状況に関係なく、
等しく社会生活を営むための「生」の情報を教えるべきだと私は思う。

・2004年10月28日 あらたな日本人人質拘束事件を別の角度から考えてみる
イラクで24歳の男性がアルカイダ系の武装グループに拘束され、
48時間以内に「自衛隊をイラクから撤退させるか」もしくは、
「日本政府が米国に対し、イラク囚人を殺害したユダヤ主義者の身柄を引き渡すよう、
圧力をかけるかしなければ、人質を殺害する」と言っているそうだ。
そしてこの日本人男性がジャーナリストやボランティアなどではなく、
単なる「旅行」目的だったことで、頭の硬いバカな連中は、
彼を批判することで自分のやっている行動を正当化しようとしている。

さて、私はまず一つ断っておかねばらならいが、
彼(香田君)が殺されても仕方がないし、
「彼のために」自衛隊を撤退する必要はまったくないと思う。
殺されても、当然だと考えている。

外務省やら政府関係者やら、イラクに行ったことがある、
先輩気取りのジャーナリストたちは、こういう。
「なぜそういう旅行をしたのか理解に苦しむ」
「イラクはとても旅感覚で行くところではない」
そんなことは誰だってわかってる。
でも彼は行った。もしかしたら彼だけではないかもしれない。
ごく少数にしても、そのような行動をしている若者はいると思う。

私は先に拘束された5人、特にはじめの3人、
「負け犬」女でボランティアにしか自分を救える道がなく、
インドを中心にボランティア活動をしていたにもかかわらず、
危険なイラクに行き、まんまとつかまりヒステリーを起こした高遠さん。
カメラマンとして成功することができず、
イラク戦争という誰もが思いつくもっともセンセーショナルな話題に飛びつき、
アルバイトしてお金を貯めて、イラクに行って見事につかまった、単なる自称カメラマン、郡山さん。
そして、イラクがはじめての今井君。
この救いようのない彼ら3人より、僕は今回の香田君の方がよほど「まっとう」だと思う。

自分をただの「旅行者」といっている。
ボランティアだとかジャーナリストだとか、もっともらしい肩書きや理由を作っていない。
にわかボランティアやにわかジャーナリストなんて旅行者とはっきりいって変わらない。
旅行者のままごとにしか過ぎない。
それを「私たちはいいことをしている」と勘違いしているような前述3人なんかより、
「私はただの旅行者でニュースで話題になっているイラクってどんなところなんだろうと思って、
浅はかだけど行ってしまった」という方がよっぽど正直だし、自分自身を誤魔化していない。
その意味で、私は今回の香田君の気持ち(つまりはなぜイラクに行ってしまったのか)は、
わからなくはない。
前述3人なんかより、よっぽどましだと思う。イラク行きの理由としてね。

新聞やニュースの記事から彼の経歴をたどると、
典型的な現代をさ迷える若者だったことがわかる。
「プロボクサーになりたい」と高校を2年で中退。
塗装会社や畳店で働いて費用をためる。
まず、ここで彼は気づいてしまったんだろうな。
大学受験というバカらしさを。
大学受験がバカらしいとわかってしまったら、高校に行って勉強する意味はない。
だから辞めたんだろう。
理由は何だってよかったんだと思う。
本当にボクサーになりたいなら、ジムとかに行くだろうし。

「なぜ今、旅行するかわからない」といった大人たちに私は聞きたい。
なぜくだらん暗記だけで社会には何の役にも立たない、
知識暗記型の大学受験をさせて、いい学歴を求めるのか。
私はそのことの方がよっぽど不可解きわまりない。
しかし彼はそれにきっと気づいてしまったんだろう。

そして、今年1月からニュージーランドへ「ワーキングホリデー」へ。
出発前に開かれた中学時代の友人との同窓会で、
「自分探しの旅に出る。ニュージーランドでホームステイした後、ワーキングホリデーで各地を旅したい」
とうれしそうに話していたという。
「ワーキングホリデー」「留学」「自主留年」「資格試験」・・・
こういった進路を選択するそのほとんどは、単なる「逃げ」だ。
別に悪い意味じゃない。ただ自分がやりたくてそうしたわけじゃない。
ただ人生を考える時間を延長したい。
大学の4年間でもその答えが見出せない。
だから「留学」だの「ワーホリ」だのもっともらしい理由をつけて、モラトリアムを延長する。

こんな若者いっぱいいるよ。
若者が悪いんじゃない。そんな世の中にした大人が悪いんだよ。
その大人が彼に向かって「なぜイラクに行くかわからない」だって?
いい加減にしてくれ。そんなこともわからんのか。
高校中退、ワーホリ、そしてバックパッカー。
ようは、今の日本の社会に、何か違和感というか矛盾を知ってしまって、
それを現実社会の中で融和することができないし、経済的余裕もあるから、そういう「遊学」ができてしまう。
ただそれだけのことだよ。

機密費ためて研修だ視察だという名の税金泥棒旅行を楽しんでいる政治家や官僚たちこそ、
今、イラクに視察旅行にでも行ってきた方がいいんじゃないか。
日本社会でぬくぬく育って、税金盗んで飲んだくれて遊びまわって、こういう事件が起きると正義ずらする。
そんな「大人」より、ニュースで頻繁にやっているイラクってどうなってるんだろうと、
危険は承知だけど本当に危険なんだとうかと、自分の目で見てみたくって、
「ジャーナリスト」だの「ボランティア」だのもっともらしい肩書きをつけない彼は、
私はある意味、実に正直でいいと思う。
その気持ちはすごくわかるよ。
ま、殺されても仕方がないし、同情の余地はないけど、気持ちはわかる。

さて、もう1つ、この事件で考えてみたいことがある。
一体、イラク戦争とは何だったのか?
ありもしない兵器があるとわめきちらし、勝手に他国に進撃し、
多くの無実のイラク人を殺し、収容所で残虐非道な行為を繰り返し、
フセインをとっ捕まえたあげく、アルカイダ武装グループやさまざまな武装グループが闊歩する、
こんなむちゃくちゃなイラク社会にしたのは誰なのか。
なぜこんな事件が起きるのか。
アメリカが侵略をしなければ、こんなことは起きなかっただろう。
あらためて思う。
「なぜ彼が旅行に行ったかわからない」という外務省に聞く。
「なぜ、こんなにイラクをむちゃくちゃにしたアメリカに協力しているのか」と。
私にはそっちの方が謎である。
国連のアナン事務総長までもがアメリカのイラク戦争は誤りであると公然と批判しているにもかかわらず。

まだ続いているイラク戦争。
戦争というかアメリカのイラクに対する国家的テロ活動といった方がいいが、
それによるイラクの民間人死傷者は1万5000人を越えるといわれ、
そしてまた派遣されたアメリカ兵だけでも1100人が死亡している。
さらにこのイラクへのテロ活動のせいで、アメリカの財政は危機に瀕しており、
クリントン政権の黒字を食いつぶし、
今年9月に発表された2004年度の財政赤字は46兆円にもおよんでいる。

にもかかわらずだ!
こんなくそ大統領は今、選挙をしているというのに、接戦を演じているというから驚きだ。
巨額の財政赤字、イラクの対テロ活動、イラク戦争の嘘、自国の兵士ですら1000人以上の死者を出す事態、
こんな大統領を支持する輩がアメリカという国には約過半数もいるということになる。
アメリカ国民はブッシュ教祖様に洗脳されているのか、
それともよほどバカなのか、それともよほど戦争で儲けているのか。
もしくはその対立候補であるケリー君がブッシュ以上のおまぬけであるということか。
というかアメリカという大国がアメリカの頂点たる大統領に、
ブッシュかケリーしか選べないという人材不足。
そのせいで、すべてはおかしくなっている。

香田君は殺されても仕方がない。
でも私にはイラクに今、旅行をしてしまった気持ちはなんとなくはわかる。
ジャーナリストやボランティアと称してイラクに入って大迷惑をかけたかつての3人の気持ちより、
今、世界で最も人を殺し、お金を無駄遣いしている、最も愚かな政治家ブッシュに協力しようという、
日本政府や政治家の気持ちより。

今回のイラク人質事件を契機に、あらためて何が、誰がいけないのかを考えてほしい。

・2004年10月27日 高円寺商店街

高円寺商店街写真

鶴見の佃野商店街の消滅の日は近く、
商店街の衰えは時代の趨勢だと書いたが、
まだまだ、がんばっているところもある。
それが、私が以前、住んでいた高円寺だ。

高円寺の商店街はすさまじい。
駅の北口から南口まで、直線距離でも徒歩30分ぐらいは、
いろんな商店街が連なっている。
一部、かなりさびれているところもあり、
私が高円寺から引っ越してからわずか2年あまりで、
店がつぶれて空き地になっていたり、マンションが建設されていたり、
なんといっても恐ろしきコンビニが数多くできていたり、
古い店がつぶれて新しい店はできたりはしていたけど、
とにかく人通りも多く、店もまだ息がある。
時代の趨勢をくつがえすことは難しく、
もう何年かしたら高円寺といえども商店街が廃れてしまう可能性はなきにしもあらずだが、
いまはまだ、元気がある。
そんな移り変わりを思いながら、長い長い商店街写真をご覧ください。

・2004年10月26日 新潟に思う
地震が起きた途端、各局は競って「死亡者数」を争う。
あっちの局では死亡者5人、こっちの局では死亡者9人。
駆けずり回って取材をして、死亡者数ばかりを追いかける。
誰が死んだのか、テロップはわずかしか流されない。
死亡者数はいつまでもいつまでも、画面の右端に表示されている。

なぜ東京で、東海で起きないんだ。
天罰を下すべきは新潟や阪神ではなく、東京じゃないか。
東京がめためたになれば、日本という異常な国家は、
少しまっとうにいろいろなことを考えるんじゃないか。
国民の税金をぶんどり、公共事業でリベートもらって手抜き工事した道路や橋が壊れる。
毎年、期末になると、予算を使い切るため、
どうでもいい道路を掘り起こしては舗装しなおす道路が壊れる。

地震の被災者のために補正予算を組むとかいっているけど、
厚生労働省は「監修料」の名目で5年間で7.5億円も支払って、
その相手は社会保険庁OBという、見事につるんで税金を私物化している連中がいる。
空出張やタクシー代の名目で莫大な金をプールして、
現職員とOBで税金を食い物にする。
お前ら、全部吐き出せ。
吐き出して、被災者のために使いなさい。
そしたらどれだけ社会がよくなるか。

道路が寸断されているとか、新幹線が動いていないとかいうけど、
マスコミ取材班はばんばん被災地にいって取材をしてる。
なのに救援物資である食料や衣服や仮設住宅が足りてないという。
どうにからなんのか。
システムさえしっかり作っておけば、
金と時間と人を「普通」に有効に活用し、
こういった大災害時に被災地に資源を集中できるんじゃないか。
被災地から車で1時間の場所では、普通の暮らしをしていて、
東京からマスコミが頻繁に出入りしているのに、
物資が足りないっておかしいじゃないか。

何が大切なのか。
社会の1つ1つを正しい方向に正していけば、不幸な大災害が起きたって、
迅速な対応ができる、そんな「豊かな」時代なのではないのだろうか。

そして、もう1つ。
被災地の家の散乱状況とか見ると、実にどうでもいい物があふれている。
モノ、モノ、モノ、モノ・・・
いらんモノは買わず、整理し、捨てていれば、もっとすっきりするのにな。
それは自戒も含めてだけど。
世の中のおかしみは災害時にうみのごとく出てくる。
そう、どうしようもないプロ野球界のように。
徹底的にうみを出して、出して、出しまくって、
社会を浄化するチャンスだと思う。

そのためには、東京に地震が必要だと思う。
未だに東京ではバベルの塔を建て続けている。

それと、兵役のかわりに、救助活動の訓練としての「自衛」隊入隊を義務化して、
救援部隊の予備役を作っておいた方がいいんじゃないか。
こういった災害が起きた時、予備役を徴集して、被災地救援に当たらせる。

そういえば自衛隊はまだイラクにいって、アメリカの片棒かついでるんだな。
すべては、つながっている。
悪の連鎖を断ち切り、善の連鎖を生み出したい。

サラ金更新情報
24:媒介業者開拓
25:7000万円案件4

・2004年10月25日 ミスチル桜井君新バンドのアルバム全曲感想
ミスチルの桜井君とプロデューサーの小林武史が中心となって、
新たに作ったバンド「Bank Band」。
その名の通り「ap bank」という環境にやさしい企業に融資するという活動の一環ではじめられたバンドだ。
ちょっと活動があまりに複雑かつ専門的に過ぎ、
新聞で紹介されてしまうぐらい、経済性により過ぎた側面があって、
一般ファンにはなじみにくい活動ではあるが、
私はその活動に賛同するとかしないとかではなく、ただ純粋に好きな桜井君の声を聞きたい思いで、
「Bank Band」のファーストアルバム「沿志奏逢」(そうしそうあい)10/20発売を購入した。
すべてカバー曲。
下記が収録曲と原曲の歌手名だ。

1・僕たちの将来/中島みゆき
2・カルアミルク/岡村靖幸
3・トーキョーシティーヒエラルキー/ヒートウェイブ
4・突然の贈りもの/大貫妙子
5・限りない欲望/井上陽水
6・マイ ホーム タウン/浜田省吾
7・糸/中島みゆき
8・HERO/Mr.Children
9・幸福のカノン/さねよしいさこ
10・優しい歌/Mr.Children
11・歓喜の歌/遠藤賢司
ボーナストラック
12・僕と彼女と週末に/浜田省吾またはイメージの詩/吉田拓郎

・全体印象
非常に微妙だな。
私は大変ミスチルが好きで、ミスチルが好きということは桜井君が非常に好きで、
マイトリルラバーも好きだから、ここに加わっている小林武史にも興味があるし。
そういった観点から発売と同時に買ったわけだけど、
ミスチルファン、桜井ファンが満足できるか、
また、そうではない人にもすすめられるかというと、私はノーだと思った。
ある一定程度の意義はあるけど、多くの人が買って聞くアルバムではない。

選曲が実にしぶくマニアック。
ほとんど原曲を知らない。
たとえば歌はいいのに歌い手がスマップのようなくずでせっかくの歌が台無しみたいな、
そういう世間に広く知れ渡っている歌を桜井君が歌うということによって、
その曲が生まれ変わるみたいな、そういう有名曲の選曲がまったくない。
かといってすごく知られているわけじゃないけど、そのファンの中では名曲として知れ渡っているという曲も、
中島みゆきの「糸」ぐらいで、あとはどうかな。
とにかくカバー曲の選曲がマニアック過ぎて、聞きにくいという難点がある。

また逆に曲自体が知られていないことを利用して、
まるで桜井君のオリジナルアルバムみたいな再生の仕方になっているかというと、
やっぱりカバー曲って感じがもろしてしまって、
下手をすると「桜井君のカラオケ」収録曲になりかねない。
ただ聞けば聞くほど味のある曲もこのような曲には多分に含まれているだろうから、
まだ聞いてから1週間しかたっていない状況でどうのと判断する気はないけど、
たとえばミスチルの新曲だったらファンでなくても、
「この曲いいじゃん」みたいなことにはまずなりにくいだろうな。

そういうことを作り手は見透かしてか「限定30万部」と限定生産で煽って、
「予約しないと買えない」と脅して、私も予約したんだけど、
実際には予約しなくても結構、店には余っていたようだ。
多分、ミスチル嫌い、桜井嫌いの人には格好の批判材料を提供してしまった感はあるが、
私にとっては、このアルバムがいいか悪いかは別として、
桜井君がミスチルを離れ、自分の作詞作曲した曲を離れ、
まったく違う歌手の曲をカバーして、まったく違うバンドで歌うことは、
今後のミスチルの活動や楽曲作りに絶対にプラスになるだろうという意味では、
非常に「いい」アルバムだったのではないかという気はする。

それともう1つ。
中島みゆきを聞きなおしたり、井上陽水を聞きなおしたり、
「カルアミルク」の原曲をつくった岡村靖幸を聞いてみようかとか、
桜井君を介して音楽が広がるという意義もあると思う。

あまり期待せず、「カルアミルク」よかったなあとか「トーキョーシティーヒエラルキー」よかったなあとか、
そのぐらいのちょっとした発見程度の期待であれば満足はできると思う。
ということで、特にどうしてもという以外の人におすすめできるものではないが、
どんな内容なのか、簡単に紹介しておこう。

1・僕たちの将来/中島みゆき
アルバムのはじめの曲ということもあり、はじめ聞いたとき、極めて違和感があった。
桜井君のボーカルと曲があっていないような気がしたのだ。
よくいえば「丁寧」に歌っているということになるのだが、
どちらかというと、合わない曲をこわごわと歌っているように聞こえた。

でも何度か聞くうちにこの曲がすっと入ってきた。
やはり中島みゆきという天才肌の作った楽曲の完成度の高さが物をいっているのだろうが、
日常性にある一つの物語からバックグラウンドに感じられるメッセージ性のある歌詞、
アコースティックな見事な演奏、そして桜井君の声が、だんだんと合ってくる。
いいですよ、とても。
私は中島みゆきは結構好きなので、
原曲をぜひ聞きたいと思うが、なかなかなくって、現在、探し中。

2・カルアミルク/岡村靖幸
これが圧倒的にいい。
それは皮肉なことに他の曲とは選曲の基準が違うから。
桜井君が好きで歌いこんでどうしても入れたかったから。
やっぱりそういう曲は他の曲とはまったく違って聞こえる。
どうせなら、そういう基準でカバーを選べば良かったんじゃないかという気がしないでもないんだけど、
それは桜井君ソロのカバーアルバムでもないし、ミスチルのカバーアルバムでもないから、
どうしても「ap bank」という縛りが逆に楽曲のできを低下させているような気がしないでもない。

3・トーキョーシティーヒエラルキー/ヒートウェイブ
これも非常にいい。
現代的なテーマで歌詞にアイロニーが含まれていて、
桜井君にぴったりはまってる感じ。
語るようなボーカルと歌詞が非常にマッチングしていて、
今後の桜井君の音楽活動に参考になったに違いない。
この方向性での曲、ありですよ。ミスチルでもソロでも。

4・突然の贈りもの/大貫妙子
1、2、3と来て、4曲目は何度聞いても飛ばしてしまう。
なんだろう。思うに、基本的に女性歌手のカバーが桜井君にあってないんじゃないかという、
根本的な問題もあるかもしれないけど、
あんまり起伏のない曲が桜井君には苦手なのではないかということもあり、
曲そのものが自分自身が気に食わないからなのかもしれない。

5・限りない欲望/井上陽水
「井上陽水」「限りない欲望」ときたらまさしく桜井君に合いそうなテーマなんだけど、
それほどぴたっとはきていないような気がする。
井上陽水の歌は非常に難しいと思う。
人が歌うとすごい単調に聞こえてしまうメロディ、歌詞も、
彼が歌うとまったく聞こえ方が違ってしまう。
逆にそれだけくせがあるので、多くに人間に受け入れられるかという問題は出てくるが。
桜井君が歌うことによって「普通」に聞こえるというメリット・デメリットはある。
もっと狂って叫んで歌った方がいいような気がしないでもない。

6・マイ ホーム タウン/浜田省吾

これもすごく桜井君には合いそうなんだけど、いまいちはまりきれていない感じ。
というかこれも4曲目と一緒で、楽曲そのものが私にはどうもすっとこない。
直接的なメッセージがあるわりに、メロディに起伏がない。
玉置浩司なんかにこの曲を歌わせたらすごくはまるような気はするが。
飛ばしてしまうな。

7・糸/中島みゆき
いわずとしれた中島みゆきの名曲。
1曲目の「僕たちの将来」よりもこちらの方が桜井君のボーカルと合っている。
それにある程度、聞き慣れていることもあり、
この楽曲の素晴らしさからすると、ちょっと極論をいえば、
誰が歌っても素晴らしく聞こえるだろう。
それだけこの曲は歌い手に関係なく完成度が高い。

中島みゆきの原曲と聞き比べてみる。
やっぱりみゆきの方が圧倒的にいいな。
ただくせがあるので、平均化標準化したという意味と、
この素晴らしい曲の存在を知らしめたという意味での桜井君の功績はあるだろうけど。

8・HERO/Mr.Children
このカバーアルバムにミスチルの曲を入れるのはどうか。
非常に微妙だ。
下手をすると単なるバージョン違いかライブバージョンにしか聞こえない可能性があり、
このアルバムでやる意味がないからだ。
このことについては突っ込みも予想してか、アルバム歌詞カードの冒頭で、
桜井君がコメントをしているが、ミスチルファンの私でも、
「言い訳っぽいよなと方々から突っ込まれそうだ」という懸念がないわけではないが、
ここでは善意に受け取ろう。

ドラマティックさでいえば、ミスチルの「HERO」の方が断然いい。
ただ、小さなバンドで、小さなライブ会場で、
彼が自らの曲を歌うとしたら、このような曲にはなるだろう。
もっとアレンジや歌い方を変えてもよかったような気はする。
小田和正が歌ったように。

9・幸福のカノン/さねよしいさこ
同じ言葉が単調に続く歌なんだけど、結構はまってる。
ここまでシンプルな曲になると、逆にアルバムでの存在感という意味では非常に出てくる。
耳につく、というか。
ただ聞き込む、歌い込むという曲ではないような気がする。
こういう曲がアルバムに1曲あってもいいし、ほっとするのでいいとは思うけど、
多分、何度も聞きはしないような気がする。

10・優しい歌/Mr.Children
ミスチルカバー曲第2弾。
「HERO」のカバーよりうんといい。
まったくミスチルの曲とは違うからだ。
テンポがスローになり、丁寧に歌い上げる声がすっと入ってくるし。
ミスチル原曲とはまったく違うので逆にこのアルバムでやった意味がすごくあると思うし、
ミスチルファンでも聞きたいなと思う曲に仕上がっていると思う。

11・歓喜の歌/遠藤賢司
こんな曲が何曲かカバーされていたらよかったのだろうと思う。
桜井君のイメージと見事にあっている。
曲もいいし。
歌詞もすごくいいし。
非常にいいですよ。

ボーナストラック
12・僕と彼女と週末に/浜田省吾

歌詞カードにはまったく曲名は書かれておらず、存在も記されていないので、
12曲目があったことに驚いた。
しかもしかも驚くべきことに、ネットでいろいろ調べていたら、
買ったCDによってボーナストラックが違うというのだ。
なんでそんなばかげたことをしたんだろう。
そんなもの、誰ものぞんでない。
またまたネットでの勝手な無料楽曲流通を促進するだけじゃないか。

さて、この曲ですが、非常にいい。
浜田省吾の曲とは知らなかった。
桜井君自身がこのために作詞作曲したのかと思ったぐらい、見事にはまっている。
最後にふさわしい曲ではないかと思う。
ただちょっと歌詞がストレートすぎてくささも感じないでもないが。

・ミスチルの部屋

・2004年10月24日 花に毒を盛る



私に画才はない。
私の親戚の、ミスチル好きの、しんのすけ(21才だったかな)の絵である。
実にすばらしい絵だ。
すばらしいのでつぶやきに紹介することにした。

イラストの専門学校に通っている。
ある授業の課題で「いっぱいのかわいい」という題で何か書けという題材を出されたらしい。
それで遊園地にかわいらしい動物たちを描いていた。
しかしそれだけじゃつまらない。
ということで、そこに毒が盛られている。
最高!ですね。
私もこういう絵が描けたらいいなと思う。

絵は実にかわいい。ぱっと見、かわいい。
しかしよく見ると、かなりえぐい絵である。
私は「現代社会に生きる自己チュー世代の若者」を描いたものかと思った。

かわいらしい顔でかわいらしい衣装を身にまとい、
毎日、遊園地みたいなところで楽しく過ごしている、ように見える。
しかし、その行動をよく見てみれば、
自分だけがかわいくて、他人に気をつかわず、他人を蹴落とし、他人を傷つけ、
他人をつけまわし、他人を利用し、他人を踏みつける。
私はそんな絵だと思った。

実に細部にまで凝っている。
観覧車の時刻まで「4:44」になっている。
現物の迫力でお見せできないのが残念だ。

私に画才はない。
写真か文章で、このように表面上は「花」を描きつつ、
よく見るとそこには現代社会を如実に反映した「毒」の世界を描く。
そんな手法ができたらなと感心した次第である。

しかし、こんなえぐいので、私はすかっとした気分だったけど、
学校の先生はどんな反応をしたのかな。

彼は卒業制作の題材に、私の海外の写真を使ってくれるらしい。
画才のない私の写真が、彼が絵に描いてくれることは非常に楽しみでもある。

いつか、彼の絵と私の文章のコラボレーションで、
何かできたらなと思う。
がんばって、どんどんいい絵を描いてくれ。しんのすけ。
私も負けずに、どんどんいい文章を書いていきたい。

・2004年10月23日 休前日
「鎌倉・湘南・三浦半島」。
鎌倉。
寺めぐり。
紅葉には早い。迷う。他にどこかあるか?
カマクラ、カマクラ、カマクラ、カマクラ・・・念仏のように唱える。
ヒットしない。
何がしたいんだ。

「マナヅル」と神のお告げがくだる。
動かなくなったスクリーンセーバー。叩く。
切り替わる。インターネット。「真鶴」。検索。
うなる。
ガイドブックを手に取る。
神のお告げはおりない。
まぐれだ。
意外に遠い。却下する。

ネットにつないだついでに「日帰り」と打ってみる。
「首都圏日帰り旅行」という求めていたサイトを見つける。
首都圏から1時間、2時間、3時間。
横浜。やめてくれ。うちから30分。
高尾山。
箱根。
ん?箱根。箱根。箱根。箱根かあ。
意外な盲点に気づく。
パソコンを後にする。
書棚に行く。箱根を見つける。
そういえば天気が悪くてやめたんだ。
付箋が張ってある。お散歩コース。
しかし、ひらめかない。
でも、箱根。いい選択だ。

仙石原。
今が見頃。
ただののっぱらくんだりにいって何を撮る。
俺は、きっと、人が撮りたい。
「箱根」を捨て、「東京」を取り上げる。

山手線一周。
歩けるかな。
多分、無理だ。
やはり渋谷か。企画性がない。
俺は何を撮りたいんだ。
渋谷。朝日の出る頃に行きたい。
日の出は何時だ。というか明日ほんとに晴れるのか。
天気予報は信じない。
ベランダに出る。空を眺める。
星が2、3、見えるだけ。
雨は降らないが、快晴というわけではないんだろう。

「鎌倉・湘南・三浦半島」「日光・那須・栃木」「横浜」「東京」。
ありったけ出して積んでみる。
ひらめかない。
そういう時はだめだな。
ビデオが2つある。時間は容赦なく過ぎていく。
ふりだしに戻って鎌倉かと思う。
「鎌倉」を見る。違うな。
「東京」を見る。やはり渋谷か。

そういえば。ひらめく。
藤原新也がスイッチで渋谷を撮った写真があった。
探し出す。あっけなく見つかる。
渋谷。
やっぱりすごいな。
写真も文章もある。
ちょっとまねできないな。
いつかは藤原新也になる。
ま、せいぜい夢見てろ。
現実に引き戻す。
渋谷。
朝か夜。それか昼間。
眠くなる。時間は24時を回る。
つぶやきを更新しなくては。
始発だと何時だ。
もう幾時間も寝れない。
起きれないのがオチだ。
やはり昼からか。
渋谷でやたらめったら撮ってどうする。
それともおねえちゃんとっつかまえるか。
想像する。
酔狂だな。
暇つぶしか。
そんなにおもしろいか。
そんなに暇ではない。
鎌倉か渋谷。厳しい二者択一。
だったら家にいるか。

結論は出ない。
土曜日も日曜日もある。
ほんとに晴れるか、ふたたびベランダに出る。
変わらない夜空。
雨続きの平日で、晴れの休日に開放されたいのか。

フィールドワークとディスクワーク。
動かなきゃはじまらない。
思う。
絵や文章は、写真と違って想像が物をいえるからな。
でも机上の空論では書けない。
書けてもせいぜいアフターダーク程度の作品だ。

どうする、かさこ。
ま、すべてはなりゆき。
テレビをつけた瞬間、世界が変わる。
流される。心地よく。

時間は残酷に過ぎる。

・2004年10月22日 天災と人災
日本列島を襲った台風23号の被害は79年以降最悪とのことだ。
20府県で56人が死亡、29人が行方不明者になったという。
そして、ショッキングな写真といえば「観光バス水没事故」である。
朝日新聞の21日夕刊には、まるで川の中の小さなボードに何人もの人が座っているように見えるが、
なんとそれはバスの屋根の上である。
無事、救出されたらしいが、あわや37人全員死亡という大惨事になってもおかしくはなかった。

過去最悪の被害とか騒ぐけど「天災」でどうしても防ぎようもない被害と、
人間が台風を甘く見て行動したために「被害」に合ってしまった「人災」の2つがあると思う。
最悪の被害というが、この「人災」部分を見逃してはならないと思う。

私にはこの観光バス事故がちょっと信じられない。
「超大型」で今季最大の台風が近畿をもろ直撃すると前日から予測されていた。
にもかかわらず、のんきに「観光バス」である。
60代が大半という兵庫県市町村職員年金者連盟豊岡支部の誰か一人でも、
もしくは貸切バス旅行会社「トマトバス兵庫」か、
誰でもいいから、この無謀な観光旅行を辞めようとしなかったのか。
ほとんどが退職者でしょ。別に今日この日でなくてもよかったわけだし。

救助された乗客らが収容された舞鶴赤十字病院で記者会見し、
「警察の検問からも大丈夫だと伝えられたため道を進んだ」といっているらしいが、
舞鶴西署は「署の検問とは時間差があるし、規制に当たった署員らは、
観光バスを検問した記憶はないと言っている」と説明しているらしい。
どちらが本当なのかは私にはたいして問題ないと思う。
この台風の最中、観光して「警察が大丈夫だといったから進んだ」という、
自らの警戒心の怠りを棚に上げて誰かのせいにするこの無責任体質、
ちょっとあまりにおぞましい。
これが小学生とか幼稚園児ならともかく、人生のさまざまな経験を積んだ老人方ですよ。

たとえば日本シリーズはいち早く試合中止を決めた。
台風による交通機関の乱れや混乱を予測したとはいえ、試合中止は異例の事態だったが、
私にはこのような対応が「普通」だと思う。
わざわざ愛知県から来てこの日でないと見れないんですよと嘆くファンもいたけど、
超大型台風が近づいているという事態の対処として、主催者側の正しかっただろう。

台風が来るとのニュースに首都圏は台風到来目前に大パニックだった。
普段は遅いサラリーマンたちが18時頃、一斉に早々帰宅しようと、
朝の通勤ラッシュよりひどい混雑ぶりだった。
なんだ、やればできるんじゃないか。
台風だったら仕事をやむなく終わらせて早く帰ることが。
ただ私は、台風が到来するというのに律儀に定時までいなければならないということに、
まだまだ「危機管理」が足りないなと思った。

はっきりいって午後、強制的に帰宅させるぐらいの処置をとってもよかったと思う。
ちなみに18時過ぎの一斉に帰る予測外のラッシュのせいで、
台風上陸前の相当な「人災」が起こったと思われる。
異様な混み具合で電車内は殺気立ち、どなり声や苛立ちや押し合いや踏み合いなど、
相当異常な雰囲気になっていたのだ。
このような「人災」を防ぐためにも途方もない「天災」に対する認識を改めないといけないなと思う。

ちなみに私がもう1つ不思議なことは2点ある。
強烈な台風が押し寄せているのに、なぜかへなちょこ折りたたみ傘をさして、
傘を飛ばされる姿が必ずテレビで映し出されるが、
事前に台風が来るとわかっているのだから、へなちょこ傘をさすのはバカである。
逆に傘をさすことで風の影響をもろ受け、非常に危険だ。
そういう心無い輩が1人いるせいで、このような状況の中では、2次被害、3次被害が起こり、
本当に不可抗力でどうしようもない人のためにある救助隊が、
そういう人のために回されてしまったりして、被害が拡大するわけである。
観光バスのせいで救助隊が出されたのも同様だけど。

(それこそイラクへのボランティアでさんざん「自己責任論」をふりかざしたのだから、
観光旅行を中止しなかったために台風被害にあった兵庫県市町村職員年金者連盟豊岡支部諸君に、
今回の救助費用の実費負担を請求したっていいわけである。
台風の中、観光していて事故にあった連中の費用までなぜ税金を出さなくてはならないのか)

それともう1つ。
マスコミの現地取材。
危ないし意味ないからやめなさい。
わざわざ波の高い海岸部に行き、雨風に吹かれながらたった1分か2分放送するために、
あそこで待機して取材している意味がわからない。
そんなんで被害にあったらどうするんだ。
これも自己責任論観点からいけば、救助の必要なしということになる。
ああいう意味のない取材をする暇と金があったら、
台風情報をいち早く察知する機器類に金をかけた方が、
よっぽど視聴者にいち早く正確な情報を伝えることができるだろうに。

天災はどうしようもない。
しかし、天災を拡大させる、いらぬ「人災」を起こさぬよう、ぜひ注意していただきたい。

・2004年10月21日 おすすめ映画1つ
バティニョールおじさん
★★★★
いやーすばらしかった!久々に映画見てよかったなって思った。
くだらん映画ばかりで、そういう映画に限って誇大な宣伝していて、
意外といい映画が知られていない現実。
いや、ほんと、これ、いいですよ。おもしろいです。

フランス映画でレンタル専用。
私はこの映画のことはまったく何も知らなかった。
ただ「子供が主役の映画は比較的はずれない」という仮説を確かめるべく、
パッケージに子供がうつっているのを探していて発見した映画だ。
しかも、フランスではアメリよりも入場者数が多かった非常に話題の映画という太鼓判もあり、
100分と短いこともあって借りてみることにした。

この映画は、パリ、フランスにおける第二次大戦中のナチスによるユダヤ人迫害問題という、
非常に深刻で暗いテーマを扱っているのだが、描き方が実にうまい。
ただなんでもかんでも深刻さだけを強調するわけでもなく、
かといって喜劇にしてしまっておもしろおかしくしただけでもない。
監督自身が「喜劇でもあるし悲劇でもあり、主人公にも善の部分があり悪の部分がある」
と特典映像のインタビューでいっているように、
ここにはそういう両極のバランスを非常にうまく取り入れて、
かといって映画として客を飽きさせない魅力的な作り方をしている。

ガイドブックの仕事で、チェコ、ハンガリー、ポーランドを取材したので、
随分とその国の映画を見たが、ほとんどといっていいほどユダヤ人問題の映画ばかり。
もちろん忘れてはならない大切な問題なんだけど、
同時代に生きていない享楽社会に生きる私たちが映画として見るためには、
構成に工夫がないと、ただの教科書的映画になってしまったり、
なんでもかんでも善悪をはっきりさせてしまうような、かえって現実と違った形になってしまいがちなんだけど、
この映画はほんとうまいこと描いている。

はじめは喜劇的というかコメディ的タッチが強いんだけど、
「ありえないよな」みたいなすべてうまくいってしまうみたいなこともなく、
子供が出てくることもありまた大人の勘違いもあり、
いろいろな予想だにしないトラブルが出てくることも、
物語にのめりこませることがうまく、リアリティの完成度が高くなっているなと思う。
ほんと、さらっとしている映画だけど、
いろいろなところにスパイスがきいていて、すごくいろいろなことを考えさせてくれる、
非常にいい映画だ。
このような素晴らしい映画があるんだから、
くだらん映画ばかりを誇大宣伝している場合じゃないよなと思う。
このようないい映画に出会えるからこそ、
くずを恐れず、私は映画を見続け、くずはくず、いい映画はいい映画と評していきたいなと思う。

小さな中国のお針子

いいテーマなのに描き方がはっきりせず、くずでした。
中国の小さな山奥の農村。文革吹き荒れる最中、
「反動分子」として再教育のための都会から農村に送られた若者2人が、
恋をした農村の娘に外国小説を読み聞かせたりするなど逆に「教育」することで、
生き方を変えるという話。
非常におもしろいテーマだし、山奥の農村のきれいな映像も見逃せないし、
期待ができる映画だったのに、しっかりとテーマが描ききれていなくって消化不良だった。

娘がバルザックの小説で変わったといって二人の若者に何も言わず山を出て行こうとするんだけど、
バルザックの何が娘の生き方を変えたのか、まったく映画では描かれていない。
一冊の本が人生を大きく変えることだってあるとかいうセリフはでてきても、
一体、バルザックの小説を読んで、なぜ彼女が生き方を変えたのかさっぱり映画では伝わってこない。
むしろこの映画で描かれているのを見ると、
単にこの若者とセックスしてしまって妊娠しちゃって、おろしたから、
それで人生観が変わって、村にいずらくなり、新しい世界に飛び出したいだけで、
小説が彼女の人生を変えたとは読み取れない。

教育や思想の制限のせいで、いかに権力を持てる政治家の言うなりになってしまうかみたいな、
そういうことがしっかり描かれていれば、
再教育のために農村にいった若者のおかげで逆に農村が「反動」たる再教育されてしまうみたいな、
そういう映画だったら実におもしろかっただろうに、
そういう点をしっかり描ききれていないから、
中途半端な三角関係恋愛映画にしか過ぎなくなってしまっている。
しかもこれは回想録で27年後のこの若者2人が出てくるんだけど、
その娘の今はわからずじまいで終わらせてしまっている。
その当時、国家が禁止していた外国小説を読み、農村を出て都会に出た娘が、
どのように今を過ごしているのかこそがこの映画のキーとなるはずなのに、
それをうやむやにして終わらせてしまっているのは、
テーマから逃げているか、テーマをわかっていないのかのどちらかだろう。
映画人としてしっかりテーマを見据えて何を描くべきかを考えて撮ってほしいと願う。

ちなみにこの映画はフランス映画です。

・映画論評

・2004年10月20日 「偽」アフターダーク2
村上春樹著「アフターダーク」は「しょうもない」小説だけど村上春樹というネームバリューで、
「たちまち6刷36万部」を突破を記念!しまして、
無名作家が書く「アフターダーク」パロディ、「偽」アフターダークをアップします!
こんな雑文でよけりゃ、いくらでも書きましょう。byかさこ。
長いですが、中身がないのですいすい読めると思いますので、
よかったらこのつぶやきを飛ばさず、読んでくだちゃいね。

「偽」アフターダーク、これまでのお話

5:25時15分
終電に間に合わなかったサラリーマンたちが、都内から郊外へと、
朝の通勤電車とはまるで逆のベクトルへと一斉に向かっていたこの時間、
一人の男は、そんな兵隊のごときサラリーマンを嘲笑うかのように、郊外から都内へとタクシーを飛ばしていた。
シラカワオサム。38歳。
これから寝るという妻に夜24時に起こされると、
ファミリーマート限定のY社のメロンパンと、
ローソン限定のB社の低脂肪牛乳を、朝食かわりに食べるのだ。
「あなた、もうこれで牛乳はないから、帰りに買ってきてくださる?」
「ああ」
「あと、申し訳ないんだけど」
「ああ」
「セブンイレブン限定のN社のチョコレートを買ってきてくださる?」
「ああ」
「ねえ、あなた。いつまですれ違いの生活が続くのかしら」
「あと、ちょっとじゃないか」
「確か1年前もあなた、そんな風にいったわよ。私はしっかり覚えてるんだから。
なぜ、あなたばかり、深夜勤務ばかりなの?
別に、私、出世とかそういうの望んでないから、
せめて家族とともに起き、家族とともに寝る、普通の生活サイクルに戻ってほしいのよ。
お願いだから上司の方に配属を変えるよう頼んでくださらない?」
「ああ」
「あなたはなんかまるで他人事みたいね。
まあ、いいわ。とにかくN社のチョコレートだけは買ってきてね」
「ああ」

妻と毎日のように繰り返される、いってみれば朝礼みたいなものを終えた後、
シラカワは丹念にヒゲをそり、爪を切ると、
しわ一つない真っ白なYシャツに、カフスボタンをしめ、
アルマーニのスーツを着込み、150本のタイから今日の気分にあった1本を選ぶと、
ぴっちりと締め、磨き上げられた靴を履き、
そして明日の朝、集めにくるゴミ収集車のために、我が家のゴミ袋を1つ持ち、
片手にジェラルミンのアタッシュケースを抱え込むと、何もいわず、すっと家を出ていった。

「お客さん、これから仕事ですか?大変ですね」
とタクシー運転手は馴れ馴れしく話す。
「どんな関係のお仕事なんですか?」
とシラカワの不愉快をよそにタクシー運転手は話を続ける。
シラカワはタクシー運転手との会話が大嫌いだ。
なぜタクシー運転手は、お客と雑談しなければならないのだろうか。
それがサービスだと思っているなら大間違いだ。
タクシーはある地点からある地点へとお客を運ぶ、移動手段であることが仕事のはずだ。
誰も彼に会話を望んでいない。
バスの運転手も列車の運転手も飛行機の運転手もお客としゃべりながら運転はしない。
にもかかわらず、タクシー運転手だけはしゃべることも商売の1つのごときに、
お客にしゃべりかける。
シラカワは無視をきめこみ、これ以上、会話をさせないために、目を閉じる。
彼は、自宅からオフィスまで行くタクシーのこの43分間に、
これからはじまる仕事のことを考えるのが常なのだ。

シラカワはある大手プロバイダーに勤めている。
名刺にはウェブディレクターと書かれている。
ただ入社してこの方、名刺を渡した記憶は皆無に等しい。
人と会ってするような仕事ではないからだ。
すべてはネット上で済む話なのだから。

彼は毎晩26時から行われる、プロバイダ主催のディスカッション・チャットコーナーの管理者だった。
ネット上で同時的に複数人が書き込みを行い、
まるでおしゃべりしているかのようなチャットを用いて、
今、話題のニュースについて議論をするというコーナーだ。
プロバイダ会員限定のサービスでチャットに参加できるのは毎回20人限定。
チャットの閲覧に人数制限はない。
とにかくこのしょうもない、ありきたりのコーナーが人気なのは、
必ず一人、その話題に詳しい著名人がチャットに参加することになっているからだ。
著名人と「直接、話ができる」とあって、大変な人気を博しているのだ。
単なる寄せ集めのチャットコーナーだったらどこにでもあるが、
著名人が参加するという企画が受け、みんなはまるで自分が「朝まで生テレビ」のコメンテーターになったがごとく、
熱い議論を戦わせるのだった。
それをつつがなく進行・管理するのがシラカワの仕事だった。
シラカワはこの仕事が好きで、会社に無理をいって、この仕事を2年も続けていた。
今後も変わる気はない。
だから、妻とはすれ違いの生活が続くだろう。

会社とは思えない、小さな雑居ビルに到着する。
国民の誰もがプロバイダ名をいえば知っているほどの知名度はあるが、
そこには大々的な看板もなければ、自社ビルでもない。
回転ドアの事故で大問題を起こした六本木ヒルズのような、かっちょいい最新都市型ビルディングでもない。
ちなみにヒルズには楽天だのヤフーだのたいそうなネット関連会社、いわゆるIT企業が入っているが、
この会社は無駄な経費をかけないことで有名だった。
だから見栄をはって、客がまず訪れることはないのに、自社ブランドをPRするがごとき、
賃料が異常なほど高いヒルズになんか決して入らない。
IT企業である以上、仕事のほとんどはメールで済ませるのだから、電話もない。
徹底的に経費削減をする一方で、その浮いた金でコンテンツに力を入れる。
それで急成長した会社だった。

オフィスビルでもなんでもない。ペンシルビルディング。
あやしげな事務所や得体の知れない住人や隠れ家的な居酒屋やらバーやらが入った、雑居ビル。
その一室にシラカワはいつものように到着した。
この時間、何人か仕事をしているはずだったが、顔を合わせることはない。
社内連絡もすべてメールや掲示板によるからだ。
もちろん入口に美人受付などもいない。
社章だの制服だの、そんなものはあるはずもない。
接待費もまるで認められない。
社内備品の文房具などもない。
各自が持参すれば済むことだし、そもそもほとんどの仕事はパソコン上で行われることがその理由だそうだ。
パソコン上の作業をプリントすることもほとんど許されない。
自分のパソコンと会社のホストコンピュータにデータが保存されているのだから、
プリントアウトしてわざわざ紙をストックする必要もなければ、そんなスペースも認められていない。
社内用のコーヒーだのお茶だのそんなものもない。
来客は少ないし、自分で勝手に飲みたいものがあれば買ってきて飲めばいいからだ。
といった具合に、会社の徹底した経費削減、合理化、効率化で、
社内は恐ろしいほど無味乾燥な空間だった。
シラカワはそんな会社がとても好きだとは思わないが、自分には合っていると思う。

しかしシラカワは徹底した合理化のわりに、
仕事はすべてパソコンとメールがあれば済むにもかかわらず、
自宅で仕事ができないことに不満を持っていた。
何が合理化だ、何が効率化だ。
そういうなら、会社のオフィスなどいらんじゃないか。
自宅にパソコンがあったら仕事ができるし、事務所を借りる必要もない。
社員の通勤代だってバカにならないのだろうから、
そういうところからこそ経費削減するべきではないか。
そういった不満のあてつけというわけではないのだが、
シラカワは別にスーツで来る必要もないのに、わざわざスーツで出勤していた。
そして会社に着いた途端、会社においてあるオールユニクロのいでたちに着替えるのだった。

オールユニクロに着替えると、急に気が引き締まる。
よし、今日も仕事をはじめるか。

6:25時45分
マリの妹エリ。20歳。
姉とマリとは一字違いだ。
高校を卒業後、フリーターと称した時期もあったけどずっと無職者を続けていた。
だって働く必要がない。
働かなくても親と一緒に生活していれば一銭だってお金はかからない。
水道代も家賃も電気代も電話代も食費も何もかも。
それにエリは外出をほとんどしなかった。
なぜ人は外出なんて面倒なことをするんだろうか。
する必要ないじゃない。
それに外は危険だし。
今の世の中、何が起こるかわからない。
おいそれと外に出るなんて無謀行為だ。

そんな理屈をこねていたうちはかわいかったが、
いつしかエリの外出嫌いは本格的になってしまった。
前に外に出たのはもう1年半も前になる。
世間では「引きこもり」といってまるで精神異常者扱いするが、
なぜ家にずっといることがそんなに悪いんだろう?
引きこもりじゃない人だって、外出といったって、結局会社で引きこもっているだけじゃないか。
でもエリにはもうそんなことはどうだっていい。
自分には自分の生きる世界があり、結構楽しくやっている。
人嫌いというけど、毎日人とコミュニケーションとっている。

「ずっと部屋に一人でいて退屈しないの?」と母がおそるおそるエリに聞いた。
母はまるで腫れ物をさわるかのようにエリに話しかける。
怒りもしない。でも無視はできない。でも毎日話しかけてくるわけじゃない。
殿様のご機嫌伺いみたいに聞いてくるのをはじめは「ムカツク」と思ったこともあったが、
今はそんな感情はない。
ムカツクなんてこと自体、もうどうでもいいのだ。

母には答えなかったが、引きこもりっていったって、
こんなに進化した時代、パソコン1台あれば退屈することなどあり得ない。
というか、エリはかなり忙しい。
メールはほとんどしない。
決まって顔を出すチャットや掲示板などに参加していたら、
あっという間に1日なんか終わってしまう。
身がもう1つあればと思うことの方が多いぐらいだ。

別に何を話しているわけでもない。他愛のないことだ。
単なる世間話。もちろんチャットだから、他人には面と向かって話せないようなことが、
ぽんぽんと出てくる世界だから、結構奥深い話もしていると思う。
いろいろな出会いがあるし、喧嘩もするし、友達もいる。
パソコンの中には私のすべての世界がある。
だから、なまじ外に出ている人より忙しい。
現に3日間ぐらい寝ないこともしょっちゅうある。

エリは今日26時からはじまるディスカッションコーナーに参加していた。
20人限定の人気コーナーなのだが、なぜか私はしょっちゅう抽選に当たり、
ほとんど毎回のように参加している。
今日のテーマはイラク戦争。
賛成派、反対派に分かれてチャットをする。
今日のゲスト参加者はイラクの復興支援に積極的な与党の大物政治家が出るとあって、
相当なチャット参加希望者がいたらしいことをエリは知らない。
別にエリにはたいして今回の議題に興味があったわけではなかったが、
当選してしまったので参加することにしたのだ。

7:26時
今回のディスカッションチャットにはなんと500人もの参加希望があった。
シラカワは驚いていた。
いつも多くて200人程度の参加希望に過ぎないこのチャットで、
これほど今回、興味を集めたのはなんなのだろうか。
「イラク戦争」というテーマはすでに何度もやっているし、
開戦直前や開戦直後の参加希望者の数は非常に多かったのだが、
いまや日本では忘れかけてさえいるこの話題にこれだけの人数が集まったのが不思議でならなかった。
今回のゲストが大物政治家であることが要因なのだろうか。
確かに名の知れた政治家で頻繁にマスコミに登場していたが、
それほど人気があるとは思えない。
むしろこの機会に、直接、批判してやろうという参加者が多かったのだろうか。

20人限定は「厳正なる抽選」という建て前だったが、実際は管理者の好みで選んでいた。
ゲスト参加者がいるだけに問題が起きないよう、
過去の履歴から過激な発言者やトラブルを起こしそうな発言者は真っ先に除外する。
あとはチャットが盛り上がるようにユニークな経歴の持ち主を当選させる。
チャットが盛り上がり、ゲスト参加者から思わぬ発言を引き出せたりすれば、
このチャットがニュースで取り上げられることもある。
アクセス数が増えればますますプロバイダとしての付加価値がアップし、
会社の利益に貢献するというわけだ。

500人の応募の中からシラカワの厳正な審査の上、選んだ20人の中に、
一人だけ何のとりえもなさそうな、普通の女の子が一人いた。
エリだった。
他の参加者の経歴に比べ、何の変哲もない、ただの女の子。
しかも無職ときている。
しかしシラカワは彼女をたびたび当選させている。
シラカワは密かにこのエリに興味を抱いていたからだ。

シラカワはエリのプロフィールを見ている。
プロバイダに登録された個人情報など、名前や生年月日、住所、電話番号といった、
非常に基礎的な情報だけだったが、
その後、懸賞付のアンケートを使って、個人の趣味嗜好や普段の生活パターンといった、
マーケティングにつながるプライベートな情報を逐一ストックしているから、
かなりのことがわかるのだ。
そしてシラカワはネットで調べてエリの顔写真も手に入れた。
高校卒業時のアルバムに載っている個人の写真をネットで販売しているサイトから手に入れたものだ。
高校卒業時のものなので2年前の顔写真だが、実にかわいらしい顔をしている。
若い子はいいな。密かにシラカワのよだれがしたたる。

シラカワはこのエリに近づき、あるもくろみを考えていた。
別にエリと付き合おうとかそんなことは考えていない。
第一、この子は引きこもりだ。外には出ないだろう。
それよりもおもしろいことを考えている。
この子の部屋にビデオカメラを設置し、彼女の生活を映し出すサイトを作りたいのだ。
女の子の部屋ののぞきサイトはすでに何人もスカウトし、アップされているが、
いかんせん、一日中部屋にいる女の子は当然少ない。
夜、仕事から帰ってきて、着替えのシーンだけが視聴者の楽しみで、
あとはやらせのオナニーシーンしか見せ場がない。
彼氏が来てセックスシーンでも見せてくれば、それも大きな見せ場にはなるのだが、
今、視聴者の楽しみはそういった性的な描写ではないのだ。
そんなものはもうネットにも世間にもあふれているし、
わざわざ素人承諾の盗撮カメラなど見せてももう視聴者は喜ばない。
もっと四六時中、女の子の生活を「監視」できるような、
なんというかな、まるでペットのような存在というか、
制圧感を満足させるような、そんなサイトが必要なのだと思っていた。

それにエリはうってつけだった。
部屋を出ないから、視聴者は24時間彼女を手元においておける。
それがこれまでにない満足感を誘う。
「彼女のことがすべてわかる」。そんな視聴者ニーズを満足させるには申し分のない存在だ。

引きこもりでかわいい女の子は他にも何人かいたが、
ほとんどが未成年者ばかりなので、サイトにできない。
18歳以上で、かわいくて、引きこもりというと、エリが絶好のターゲットなのだ。
どのようにエリを「落とすか」。それが今、シラカワの最大の楽しみであった。

8:26時15分
一人になったマリは再び自分の世界に沈み込んでいた。
何が不満で毎週のように一人で何もせずこうして時間をつぶしているのだろうか。
何もかもが嫌だといえば嫌だし、何もかもたいした不満はないといえばない。
でもどこか自分の心の中にぽっかりと穴が開いてしまってふさがらないような、
そんな感覚がずっとマリを支配していた。
仕事のストレスなのか。
社会人になったばかりの単なる憂鬱なのか。
それとも彼氏ができないことへの苛立ちなのか。
いや、彼氏をつくろうとしない自分への苛立ちなのか。
それとも人生そのものに嫌気が差してしまったのか。
今の社会そのもの、世界そのものに嫌気が差してしまったのか。
しかしマリはそうやって自分が今、一番気にかけているもののせいに、
しないようにしないようにと自分で気をつかっているのがわかった。
いろいろな原因はあるにせよ、今、マリの心の欠乏を生んでいるのはきっと妹エリのことなんだと。

妹のエリとは2つしか違わないこともあって、姉妹というよりは友達のようにこれまで付き合っていた。
親や友達にさえ話をしない、自分の悩みを相談しあったりもしたし、
買い物に一緒にいったりもしたし、仲良く家で遊んだりもした。
とても仲の良い姉妹だった。
でもここ2年、エリとは一言も話をしていなかった。

高校を卒業して、大学にもいかず、専門学校にもいかず、働きもせず、
家でパソコンに夢中になりだしたエリ。
親はとにかくどこでもいいから大学に行けと強行にすすめたし、
勝手に願書を書いて、入学試験を受験するようにもした。
しかしエリは頑なに拒否した。

マリはエリの言い分と親の言い分の板ばさみにあっていた。
エリの気持ちもわかるし、親の気持ちもわかる。
だから私こそがこの問題を解決するにふさわしい立場だと思った。
エリに話をした。
「大学にいきたくない理由は何かあるの?」
「別に」
「何か他にやりたいことがあるの?」
「別に」
「もし、何もやりたいことがないんだったら、
別に親の肩を持つわけじゃないけど、大学にいった方がいいよ。
大学なんていったってしょうがない、意味がない、時間の無駄だって気持ちはよくわかるけど、
でも何にもやりたいことがないんだったら、それを考えるのにうってつけの場所が大学だよ。
私だって、別に何がしたくて大学にいっているわけじゃないけど、
別に高校を卒業して何かしたいことがなかったから、大学にいくことにしたの。
今、大学にいってやりたいことが見つかったわけじゃないけど、
でも高校の時よりは自分のこととか社会のこととかいろんなことが、
ほんのちょっとだけだけどわかったような気がするの。
だから、もしエリが何もやりたいことがないんだったら大学にいった方がいいと思うよ」

しかしその話をして以来、エリはマリが話しかけても、何も答えなくなってしまった。

何がいけなかったんだろう。
決してエリに無理強いするようなことはしていないつもりだった。
エリが一番したいようにと思っていた。
エリのために親を説得してもいいと思っていた。
でも逆効果だった。
あれからエリとは一言も話さず、私は家を出て一人暮らしをはじめた。

マリとエリは常に比較されていた。
マリはしっかりしていて美人で何事もてきぱきしていて勉強もできると、
いつも親から過剰とも思えるほど褒められていた。
マリはそれが嫌で仕方がなかったが、エリはもっと悲惨だった。
「お姉ちゃんに比べてあなたは勉強もできないし、学校もさぼってばかりいるし、
器量だってそんなによくないんだし、親に逆らってばかりいるし。
少しはお姉ちゃんを見習ったらどうなの?」
といつも母親は攻め立てた。
でも実際、母親が攻め立てるほど、マリもエリも違わなかった。
二人はとても性格も似ていたし、顔も似ていたし、似たもの同士だった。
なのに、いつしかマリ=できる人、エリ=できない人という図式を母親が編み出し、
エリを攻撃するようになった。
マリはそのたびに、エリをかばい、母親に物申した。
でもマリが何をいっても逆効果だった。

だからマリはいつでもただ一人のエリの味方だと思っていたし、
エリもマリのことをただ一人の味方だと思っていたはずだ。
なのに、あの時以来、完全にエリにマリは切られてしまった。
どうして?どうして?どうして?
それがマリの心の欠乏感の大きな要因であることはマリ自身が痛いほどわかっていた。

母親から聞いたところによると、エリは一切外出しなくなったという。
ほとんど部屋からも出ない。
家に一緒にいても顔を会わすことはないという。
エリは寝ていないのではないかという。
エリはいつも起きているという。
朝も昼も夜も深夜も明け方も、今日も昨日も明日も。
そんな大げさなと思ったけど、どうやらまんざら嘘ではないらしいことに、
一度自宅に帰った時に思った。
母親は精神的な病気じゃないかと思っていた。
なんとか病院に連れて行こうと考えていた。
しかしエリはただひたすらパソコンに向かってキーボードを叩き続けるだけ。
もう誰も手のつけようがなかった。

今度こそエリを助けるべきじゃないか。マリはそう思っていた。
エリに手を差し伸べられるのはやっぱりマリしかいない。
そう思っていたけど、2年前の出来事以来、すっかり自信を失っていた。
また無視されるのが耐えられなかった。

9:26時37分
「生物化学兵器がイラクになかったことが明らかになった今、
なぜ日本はアメリカを支持し、のうのうと復興支援などしているんだ。
アメリカの間違いをただし、あらためて復興支援のあり方を考え直す必要があるんじゃないのか」
「イラクで子供たちを無差別に殺しているイラク戦争に正義はない。
アメリカ批判を日本もすべきだ。
でないと日本まで中東アラブ諸国から嫌われる」
「アメリカの大義名分が間違っていたとしてもフセインを取り除いたんだからいいじゃないか」
「フセインを取り除いた後、まったく無政府状態になってテロが頻発しているイラクの今の現状を、
まったく見ていない発言だ」
「そんな甘っちょろい人道主義的見地からイラク戦争を批判していても日本に国益はない。
今はアメリカを支持しないと金正日がミサイルぶっ放した時、日本は何もできないまま焼け野原になる」
「すぐそうやって戦争賛成派は北朝鮮問題とリンクさせるが、それとこれとは別問題だ」
「だからそういう理想論が甘いんだよ。
リンクしないと勝手に決めるのはあんたらだけで、アメリカ政府はすべてをリンクさせている。
ここで日本がアメリカを批判しようものなら、
北朝鮮問題のみならず、さまざまなジャンルでアメリカから封鎖を受けることになる」
「そうやってアメリカ依存体制がいつまでも続いているからいけないんだ。
これを機会に脱アメリカをするべきだ。
北朝鮮からミサイルをぶっ放されるより、
アメリカの片棒かついでアラブ国からテロを起こされる方がはるかに確率が高いではないか」

シラカワはじっと画面を見つめていた。
なんでこんなに熱中できるんだろうな。
バカらしいとは思わないのか。こんな子供じみたゲームに大の大人が深夜まで、
ああでもないこうでもないと、マスコミからの受売りを振り回して、自己満足に浸っている。
でもシラカワはほとんど画面に書かれた文字は見ていない。
チャットのシステム上に問題が起きないかを監視し、
チャットアクセス数のリアルタイム速報をチェックし、
そしてエリが発言しないものか気を張っている。
エリはほとんど発言していない。

・2004年10月19日 チェコ郊外の町の写真2つ

世界遺産の街・チェスキークルムロフ写真

ナチスの強制収容所のあった街・テレジーン写真

サラ金更新
23:7000万円案件3

・2004年10月18日 生家消滅〜商店街の廃れ
生まれ育った家が消えてなくなってしまった時のショックは大きい。
大人になればなるほど、幼少時代の記憶など思い出すことはないけど、
今の自分を形作っている元が幼少時代に集約していることを、無意識的に思い知られる。
自分の足跡をたどる物的証拠である生家の消滅は、
自分のルーツをたどる手がかりが1つ消えてしまったことに他ならない。

久しぶりに休日晴れたので、カメラ片手に、
私が幼少期を過ごした鶴見にある社宅に行ってみようと思った。
私が20年前に住んでいた社宅の建物はもう10年以上も前に取り壊され、
新しい社宅になってはいたのだが、
私が社宅の庭で遊んだブランコは残っていたし、かけまわった坂道の崖も残っていた。
自転車を入れていた古い倉庫も残っていたし、野球をやっていたそばにある大きな木も残っていたから、
建物が新しくなってしまっても、その面影は十分感じられた。

ところがもうその社宅もなくなっていた。
なんとそこには一戸建てが立ち並んでいたのだ。

私は目を疑った。いつのまに?
私の幼少期の記憶の手がかりとなる社宅が消滅し、
きれいな一戸建てが並んでいる、坂の上の光景に唖然としたのだった。
社宅をつぶして一戸建てが20軒あまり。
記憶をもぎ取られたような、そんな衝撃を受けた。

(写真:坂の上にかつて4階建ての社宅が建っていた。今は2階建ての戸建てがずらりと並んでいる)

実際に坂を上って、その一戸建て群のところにいってみたが、もう何もかもなくなっていた。
ブランコや自転車の倉庫や大きな木はすべてなくなっていて、
かつてここが社宅だったということすらわからないぐらい、変わってしまっていた。
そしてさらにショックだったのは崖に行く道が一戸建ての建物でふさがれてしまっていることだった。
「時代は変わる」とはいえ、もうここに私の幼少期をたぐりよせる証拠は何一つなくなっていた。

しかし私が住んでいた社宅の隣にある別の会社の社宅は、
一戸建ての隅に隠れるように、ひっそりと残されていた。
隣の社宅の人とは遊び、そこには庭はないのだが、
ぐるっと回れる社宅の道路を利用して、自転車で何十週もして電車ごっこをしたり、
その道路で遊んだりもした。
まだ人は住んでいて、かつての私のようにその道路で遊んでいる子供もいたが、
ぼうぼうと生い茂る草木の多さに、この社宅もそう長くはないだろうと思った。

とはいえ、私が今、住んでいるマンションも、かつて社宅があった場所だ。
私の社宅が消滅したことを嘆きつつ、私も同じ思いを抱く生家消滅の跡地に暮らしていることを考えれば、
私だけが社宅の消滅を嘆くことはできないのだなと思う。
私の住んでいるマンションを見て「こんなに変わってしまって」と思う人がいるのだから。

諏訪坂という坂の上にある社宅群。
ここに至るには佃野商店街を通っていかなければならない。
それゆえ、いっぱい社宅が坂の上にあった時代には、
この商店街は社宅の台所として、生活用品供給の場として大いに栄えていたが、
今はもう店の半分ぐらいが昔の姿のまま閉店している。
だみ声をあげて客引きしていた活気ある生鮮食品スーパーも、
つい先日、閉店したとの張り紙があった。

まだ一部の店は「時代の流れ」に逆行してがんばっている。
商店街で買い物する客は圧倒的に老人が多い。
かつてファミリーで賑わった商店街の変遷が歩く人々の年齢で手に取るようにわかる。

ダイエーがつぶれたと大騒ぎしているが、
社宅の崩壊や商店街の廃れという一連の流れと同じように思える。
価値観や社会構造や勤務体系や家族構成や、
倫理観や経済観念や商品構成や通信環境や国際環境など、
すべて時代は変わったのだ。

(写真:20年前は日曜ともなれば人で賑わった佃野商店街だが、人通り少なく今はもう虫の息だ)

仮想商店街の楽天がプロ野球団を設立しようという時代、本物の商店街が流行るわけがない。
ちなみにこの商店街の象徴的存在だった大型スーパー長崎屋はいち早くつぶれ、
商店街の中心に位置するにもかかわらず、大型マンションになり、
ほとんど空き家のない人気のマンションとして定着して10年以上が過ぎている。

ダイエーの廃れはバブル時代の乱脈融資を手伝い、
今になって不良債権圧縮の政治的圧力でどうにもこうにも立ち行かなくなっていく銀行にも責任があるわけだが、
この商店街の入口にある銀行も、数年前に閉鎖され、
今はその跡地にマンションが建てられ、こちらも人気のマンションになっている。
商店街がすべてなくなり、一戸建てかマンションか、になる時代はもうそこまで迫っている。

会社が何でも勤労者の生活のお世話をするその象徴的存在の社宅の崩壊、
そういった家族に生活シーンのあらゆる物資を供給していた百貨店、商店街の崩壊、
そして日本の社会をおかしくした犯罪者の一人である銀行の閉鎖、
投機的目的で企業が買い漁った土地が、マンションや一戸建てとなり、
うさぎ小屋から快適な家へと人々をうつしはじめ、
店は効率化のためにどんどんバーチャルなネット店舗化する。
街にある店は、コンビニかあれば十分。
コンビニは今度ますますサービスを拡充させ、コンビニが百貨店化していくことだろう。
郵政の民営化でコンビニ郵便局ができ、コンビニで薬も買え、服も買え、家具も買え、お金も降ろせ、
食事もでき、カラオケもでき、本も買え・・・といった具合に何でもできるようになる。
それが今の時代の流れ。

・2004年10月17日 毎日更新・新コーナーオープン!
つぶやきかさこはこれまで通りの内容で毎日更新を続けますが、
新たに毎日更新するコーナーを1つ追加いたします。
写真に写っている小型デジカメで撮影した毎日の写真を1枚アップしていきます。
今まで文章のコーナーを2つに増やすと、内容がだぶってしまうこともあり、
また、両方読むのは面倒だということもあるので、
なかなか定着しなかったのですが、今回は写真のコーナーですので、
つぶやきかさことバッティングすることなく、すみわけができるコーナーだと思います。
例によっていつまで続くかわかりませんが、お楽しみいただければと思います。

なお、この小型デジカメは23100円で買ったもの。新品です。
ちなみにヨドバシでは34700円の15%ポイント引きで29495円だったので、
価格コムで2番目に安かった秋葉原の店で買いました。
ご覧のように手のひらに収まる小型であることと、
一番気に入ったのがレンズの位置が回転でき、
このまま使うと天井を撮れ、また真横を撮ることも容易になるので、
毎日持ち歩く遊びカメラとしてはおもしろいのではないかと思い購入しました。

ですので上記のようなメモ的遊び的用途には非常に向いているカメラですが、
もしこのカメラを旅行に行く際のメインとして使うのならやめた方がいいです。
バッテリーがすぐ切れてしまうと価格コムの掲示板には書かれていたことと、
シャッターを押してから切れるまでが、0.07秒と非常に遅い。
(最近は0.01秒ぐらいが当たり前のようです)
プレビュー画面が非常に小さい。
などなど、メインカメラとしては使い勝手が悪いので、そういう用途で使う方にはおすすめしませんが、
携帯電話のカメラ替わりに使うには非常に使い勝手がよいと思い、購入しました。
毎日おもしろい写真が撮れるかわかりませんが、
ま、続けていけばそれはそれで何かおもしろくなるかなと自分自身も期待してます。

・つぶやきフォト

・2004年10月16日 「偽」アフターダーク
こんな雑文でいいなら、いくらでも書きましょう。byかさこ

「偽」アフターダークは村上春樹著「アフターダーク」のパロディです。
パロディ:文学などで、広く知られている既成の作品を、その特徴を巧みにとらえて、
滑稽(こつけい)化・風刺化の目的で作り変えたもの。

1:23時55分
渋谷でも新宿でも池袋でもない。
そこから発着する私鉄に乗って満員の通勤電車に揺られて30分以上も乗るような、ベッドタウンでもない。
そこは、ちょうどその中間にある、とある駅前のビルにある居酒屋。
居酒屋といっても「白木屋」だとか「和民」だとか「養老乃瀧」だとか、
全国どこにいってもおんなじインテリアでおんなじメニューでおんなじ値段で、
店に入ると決まって「白木屋へようこそ!」とマニュアル通りに対応するアルバイトが大勢いて、
浜崎あゆみの音楽がガンガンにかけられるような、そんな無機質で無個性なチェーン店ではない。

「月の窓辺」。
一歩、店内に入ると、まるで日本庭園のような敷石が連なり、薄暗い店内を足灯だけを頼りに歩くと、
それぞれがセパレートされ、他の客には邪魔されない、プライベートな空間に仕切られた、洗練された空間が現出する。
それはチェーン居酒屋のように、外の喧騒をそのままひきづったような空間とは違い、
シャバの世界とは隔絶された心地よい都会のオアシスだった。
和服を着こなした機敏な若いスタッフが応対してくれるし、メニューはすべてここにしかないオリジナル。
●●産の牛肉を使った●●や●●産の米を使った●●といった具合に、
すべて産地が表記され、すべて食材は産地から直送されてくるというこだわりよう。
和食とフレンチを融合したような創作メニューばかりで、メニューを見ているだけでもわくわくする。
心地よいジャズが和空間と絶妙なマッチングで、さばついた心を癒してくれる。
そんな店に自分の居場所を見つけて、何度も通うようになったマリが、一人カウンター席でたたずんでいた。

マリ。22歳。
今年3月、都内の名門私立大学を卒業し、持ち前の英語力を生かして、
規模は小さいながらも希望の商社に入社したばかりの、ぴかぴかの新入社員だ。
社会人になって2ヶ月が過ぎ、化粧もスーツも板についてきた。
学生的な幼さをほのかに残しながらも、大人の女へと変貌するちょうど過渡期。
とびっきりの美人ではなかったが、十二分に男を惹きつける魅力を兼ね備えた、
理知的な端整な顔立ちと、小柄ながらもバストやヒップの肉付きがいいプロポーションは、
女性の外見としては申し分のないものだった。
それに、どこか物憂げな表情が加わった彼女がもてないわけはなかったのだが、
どことなく人を避けるような目に見えない壁があるといわれるせいか、
この22年間、男性には縁がなかった。
処女ではなかったのだが。

2:20時55分
この店を教えてくれたのは会社の3つ上の先輩のタカハシさんからだった。
営業成績は常に上位で、若手ながら未来の会社を背負う期待のホープだと仕事面での評価が高い反面、
社内の女性には手当たり次第、手を出す女ったらしという悪い噂にもなっている人だった。
マリも入社してすぐ先輩の女性社員からタカハシさんの悪い噂を聞いていたにもかかわらず、
たまたま帰りが一緒になって、向こうから「ちょっと飲みにいかない?」と誘われ、
大学時代もこのような軽い誘いには決して乗らなかったマリは、
なぜかこの時「タカハシさんは多分、噂にいわれているような人ではない」と直感し、
その誘いに乗ったのだった。
それで連れてきてもらったのがこの店だった。

「ねえ、会社でオレの噂、聞いてるんでしょ。どうせ」とタカハシさんはいった。
「は、はい・・・」
「よく、それでついてきたね」
「別に、その、そんな風に思わなかったから」
「それは、よかった。あの噂は、この際、いっておくけど冤罪なんだから」
「エンザイ?」
「そう、冤罪。確かにオレは誤解されているようなことは結構しているかもしれない。
手当たり次第、というわけじゃないけど、確かにいろんな女の子と二人だけで飲みに来ることは多いし」
「そうなんですか?」
「そうだよ。でもその後はみんなでたらめだよ。噂に聞くと、手当たり次第、誘って、
手当たり次第、女に手を出しているって話らしいけど、それは嘘だよ。
オレはそんなにもてないし、そんなに、なんというかな、噂みたいに、なんでもかんでも手を出したりなんかしない」
タカハシさんは「タバコ吸ってもいいかな」と一言断ると、
マリが「どうぞ」というのと同時ぐらいにすでにタバコに火をつけていた。

「なんでもかんでも手を出さないってことは、手を出すこともあるってこと?」
マリはニタっと笑ってタカハシさんに投げかけた。
マリはなんとなくタカハシさんをつかめたような気がした。
多分、この人は、大丈夫。扱い方は意外と簡単、と思った。

「手厳しいな、マリちゃんは。ま、そりゃそうだよ。オレも男だからね。
気に入って、相手と同意が得られれば、それなりのステップに進む。
でもそれは手当たり次第でもないし、噂に言われているように、女を泣かせて、酔わせて、
無理に連れ込んでなんてことは絶対にしてない。っていうかそんなことできるわけないじゃん。
だって仮にも相手は大人の女性だよ。
たとえは悪いけど、小学生の女の子を誘っていたずらするわけじゃないんだから。
相手の同意を得て、一緒に飲みに来て、お互いのペースで酒をたしなみ、
互いの合意を得たら、次の行為を行う。別にオレが一方的に手を出してるみたいな、
そんな噂はやめてほしいんだけどね。
おかげでここ最近、女の子を誘っても、みんな警戒して、飲みにもいってくれないんだから」

タカハシさんは決して格好つけてるわけでも自慢しているわけでもないことがマリにはわかった。
ちょっとおかしな論理もあるかもしれないけど、この人はこの人なりの誠実さを持ち合わせてる。
やっぱり悪い人じゃない。でもまあこんな噂が出てしまうのも仕方がないことなんだろうなと、
なぜかマリは微笑ましく思えた。

「何がおかしいの?マリちゃん」
「だって、タカハシさん、ものすごく正直なんだもん」
「だろ。そうだろ。そう思うだろ。オレはいつでも正直なんだけどさ、
きっと人間ってのはねたみやっかみがないと生きていけないんだろうね。
だからオレはあんまり噂は気にしてないんだけど、ただ噂が広まって新しく入った女の子も誘えなくなるんじゃ、
たまらないからね」

「タカハシさんは男の人とは飲まないの?」
「そりゃ、付き合いとか接待とかで飲まざるを得ない時もあるけど、
男と飲むとみんな仕事の話になっちゃうんだ。だからつまらないんだよ。
オレは仕事を終えたら仕事以外の話をしたいと思ってる。
だから男で仕事以外のおもしろい話をしてくれる奴となら飲むけど、そういう男は少ないね。
男はみんな無趣味だし、飲むと仕事の愚痴ばかり。
二次会といったら女の子のいる高い店に繰り出して、一緒に来た連中とは話もせずに、
商売女のおべんちゃらに乗せられてわあわあ騒いでる。
オレははっきりいってごめんだね。そんなの。
高い金払って、仕事の愚痴聞かされたり、商売女のありきたりの話を聞かされたりするぐらいなら、
仕事以外のことにもいろんな興味を持っていて、いろんな話ができる、
普通の女の子と飲んだ方が、時間もお金も人生も有意義だよ。
だからね、オレは女の子ばっかり誘うんだ。
やりたいのが目的じゃなくってね、話がしたいんだよ。
映画とか本とかファッションとか旅行のこととか結婚観とか恋愛観とか、仕事以外の話をね」

「でもなんで二人だけで誘うの?変な誤解をされるもとになるじゃない」
「そんなの決まってるじゃん。二人じゃなきゃ、じっくり話せないからだよ。
オレは聖徳太子じゃないから、何人も一緒に飲んだって、いっぺんに何人もの話を聞くことはできないし、
演説のごとき、複数の人に対して話をするのもいやだし。
っていうか、何人もいるとね、オレもそうだし、相手の女の子もそうだけど、
話の内容が変質してきちゃうんだよね。周囲の視線を無意識に意識して、
なんかこう、話に格好つけるっていうか、話を選んじゃうっていうか。
そんな話を聞いてもつまらないじゃん」

タカハシさんとの話はとても楽しかった。
でもだからといってタカハシさんと付き合いたいとか彼氏にしたいとは思わなかった。
このぐらいの距離感で会って話をするには最適な人だと思う。

時間がたつにつれて、そうはいっても噂のタカハシさんのことだから、
この後、下心的な誘いがあったらちょっと嫌だなと思っていた。
でもそれを見透かすようにタカハシさんはいった。
「大丈夫だよ、マリちゃん。そうやっていろんな御託を並べて、
女の子を安心させておいて、酔わせたところで誘おうなんてのが常套手段じゃないんだから。
確かにマリちゃんはとっても魅力的だし、とてもきれいな顔をしているし、
オレともかなり相性がいいタイプだとは思う。
でもだからといってこの後、そういう関係に至るかどうかはまったく別問題なんだ。
もちろんマリちゃんからこの後、どう?なんて誘われたら、
オレも男だから迷いが生じてしまうかもしれないけど、
とりあえずオレからマリちゃんを誘うことは今日も今後もないと思うから、
できたら今度も安心して誘いにのって一緒に飲みに来て話をしてほしい」
「随分、なんだか回りくどい言い回しだけど、そうやって女の子を騙して、
次回に勝負を決める!なんて思ってるんじゃないの?」
「もうー、まったくマリちゃんは手厳しいなあ。そんなことはしないから安心して。
これは社内では言ってほしくないんだけどね、
今、すごく好きな人がいて、その人とつきあいはじめたばかりなんだ。
だからね、当分は、そういうことは自粛しようと思ってるんだ」
その話がホントか嘘かはわからないけど、会計をすると「じゃ、気をつけて」といって、
タカハシさんと別れた。
別れ際に「今日はおごるけど、今度からはワリカンにしよう。
男がおごり、女がおごられるところから、友人関係が男女関係に変質する第一歩なんだから」
と、最後までタカハシトークを貫くことは忘れなかった。
久しぶりに楽しかったなという想いと、こんなにもあっさり別れてしまうことに、なんだか妙な空疎感を覚えた。

3:24時55分
マリは一人「月の窓辺」で飲んでいた。
そんなにお酒が強いわけでもない。
ただなんとなく、金曜日の夜は、仕事を終えてまっすぐ一人暮らしの家に帰りたくはなかった。
この居酒屋にいても一人だけど、不思議と心が落ち着くのだ。
さっきから頼んだカクテルはちっとも減ってはいなかった。
でも誰にとがめられることもなく、誰にせかされることもなく、ただぼっとしている。
それだけでよかった。

マリの実家は埼玉にあった。
社会人になったからと一人暮らしをはじめたが、
両親はいつでも実家に帰ってきていいんだよといってくれた。
別に両親が嫌いなわけでもないし、実家を避ける理由はなかった。
社会人になったけじめみたいなもので一人暮らししたけど、週末だけでも実家に帰ってもよかったし、
それを両親、特に母親は強く望んでいる風だったので、
実家に帰ってもよかったんだけど、一週間の仕事を終えて、
真にやすらげる自分の居場所はここだと発見してしまってからは、
金曜日の夜はよほどのことがない限り、ここに来て一人で週末の夜をあかし、
始発で家に帰るのが習慣になっていた。

4:25時15分
マリは何をするでもなく、ただじっと一人ここに座っていた。
本を読む必要もないし、携帯を取り出す必要もない。
常連ぶって顔馴染みの店員と話し込むわけでもなく、酒ばかり飲んでいるわけでもない。
なぜ、ここなんだろう。
一人で時間をつぶすだけなら、ファミレスでもカフェでもバーでもいいんだろうけど、
なぜかここだった。
マリのために存在しているかのような、そのためだけの空間。
そんな錯覚をいつも起こすのだった。

しかし静寂は長くは訪れなかった。
「あ、マ、マリちゃんじゃない?オレだよ、オレ」
なんだよ、いまどき、オレオレ詐欺じゃあるまいし、馴れ馴れしく声をかけてくるのは。
一人で飲んでいるとそうやって知り合いのふりして声をかけてくる男は何人もいたが、
本当に知り合いだったためしは一度もない。
無視していると強引にでもこちらを向けといわんばかりに大きな声で声をかけてきた。
「なんだよー、冷たいなー。ゼミで同じだったヤマモトだよ」

はっと、マリは顔を向けると、そこには見知った顔があった。
知り合い詐欺ではない。本当に知り合いだ。学生時代、ゼミで一緒だった男の子。
確か名前はヤマモト。
「久しぶり!こんなところで会うなんて奇遇だね。ね、誰かいるの?
ん?一人?じゃ、さ、ここ、となり、座ってもいいかな」

断る理由もない。誰かいるといえば引き下がってくれそうだったけど、見え透いた嘘はつけなかったし。
でもちょっとまいったな。
ほんとの知り合いなんて。しかも一番出会いたくない知り合いのレベル。
すごく仲良しでもまったく知らないでもない。
顔と名前はわかるし、多少、話をしたことがあるけど、
知り合った時はあまり接点がなかった人。
そういう人とこの場で出会ってしまうのは、気遣いばかりが多くて嫌だなとマリは思った。

「どうしたの?こんなところで一人で?ひょっとして、マリちゃんも終電間に合わなくって、
●●駅どまりでここまで来た口?あ、でも、随分前から来ているみたいだねー。
ま、そんなことは、どうでもいいっか。ま、再会を祝して、カンパイ!」
こんなにしゃべる男だっただろうか。
確かどちらかといえば無口な男の子だった印象がある。
マリが話す暇もなく、とことんしゃべり続ける。
このままこの人と朝まで一緒にいるはめになるのか。それだけは避けたかった。

「確か、マリちゃんは商社に入ったんだよね。どう、仕事、大変?忙しい?
どう、おもしろい?っていうか商社の仕事ってどんな感じなんだろうな。
オレにはさっぱりわからないよ。オレなんかさ、毎日毎日、店頭で声張り上げてさ、
電化製品の販売にあけくえてるんだよ。
もう、入社以来、現場研修っていって、店頭に立たされ続けてるんだけどさ、
もういい加減、やになっちゃうよね。それが嫌で結構、やめてく同期も多いし。
やっぱ学生時代はよかったよなー。今にして思えばさ、
学生なんてほんと、のんきなご身分だよ。
学生の時は気づかなかったけどさ。あ、なんか、ごめん、オレばっかしゃべり続けて。
久しぶりに職場以外の人と話せたからさ、なんか、こうウキウキしちゃって」

マリはずっと黙ってヤマモトの話を聞いていた。
ヤマモトの話を聞くつもりはなかったのになぜか聞き入ってしまった。
どこかタカハシさんの話と似ている?
はじめに抱いたヤマモトに対する嫌悪感は薄れていった。

「でもさ、なんていうかさ、でも社会人はすごいよね。
とにかくお金がたまる一方でさ、といったってそんなに初任給よくないんだよ。商社みたいに。
別に嫌味でいってるわけじゃないけどさ。所詮、メーカーだからさ。
でもほんと学生時代、バカみたいに深夜とか休みなしで働いたってさ、
ぜんぜんお金たまらなかったのにさ、社会人になったとたん、すごい勢いでお金だけがたまってくんだよね。
使わないってこともあるけど、あと、オレ実家だし。
えっと、あれ、マリちゃんは実家だよね。えっ、一人暮らししてる?
あ、そう。うん。それもいいと思うけど、やっぱ実家はいいよ。
多少、窮屈だけどさ、物理的にじゃなく、心理的にね。
親にもちゃんとお金月々いれてるけどさ、でもやっぱすごい金たまるんだよね。
で、来月にはボーナスもらえるんだってさ。
新入社員だから一律5万円らしいんだけどさ、でも何にもしなくって5万円もらえるんだから、
こんなすごいことないよね。
ほんと、いろんな嫌なことも多いけど、社会人って学生とはぜんぜん違うよね。
こんな話ばっかでごめんね。退屈した?」

再びマリはヤマモトに対して不快感を抱くようになる。
なんだか今の私にとってはどうでもいいことばかり。
だからなんなのっていいたくなるような。
でもかといって別の話をしたからってそれに意味があるかどうかはわからない。
第一、自分はまだヤマモトに何も話していない。
ヤマモトが私のようにただ黙っていたら、私は何を話すだろう。
ヤマモトのような話をするかもしれない。いや、しないかもしれない。
やっぱり私はしないな。そんな話。
多分、黙ってる。だってとりたてて話すことはないんだから。

「私、ここによく一人で来るの」
ふと、マリは、ヤマモトの会話の合間にぽつんとつぶやいてみた。
それは恐ろしいほど効果が合ったようで、急にヤマモトは狼狽しはじめた。
「あっ、ごめん。もしかして、オレ、じゃまかな。
でももう、すぐ帰るから気にしないで。もうあと10分ぐらいで帰るつもりだったんだ」
別にそんなつもりでいったんじゃない。
でもそれをマリは口に出すことはなかった。
「明日も仕事なんだよね。朝8時に出勤しないと。
今日は接待でさ、到底途中で抜け出せるような雰囲気じゃなくってさ、
ほんとはすぐにでもタクシーで帰ろうと思ったんだけど、
なんかそのまま家に帰っても寝るだけだしなーとか思って、
ふと目に付いたこの店で一杯飲みなおしてから帰ろうって思ったんだ。
そしたら君がいてびっくりしたよ。こんなところで知り合いに会うとは思ってもみなかったからね。
なんだかそれで急に学生時代に戻れたみたいで勢い込んでしゃべっちゃってすまない。
けど、なんかうれしくってさ。
じゃああと一杯飲んだら帰るから」

マリは黙っている。何かをいってもよかったけど、なんとなく面倒くさかった。
ヤマモトの気持ちは痛いほどよくわかるのに、だからといってそこに無理やり接点を見出し、
互いの傷をなめあう必要もないと思ったから。
というか、もしかしたらヤマモトも、知り合いに出会ってしまったことで、
ちょっと予想外で計画外でまいったなとか思ったのかもしれない。
でもそんなことはわからない。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

「ここってなんだか、とっても心地がいいの。自分の心の隙間を埋めてくれる、
唯一の居場所みたいで」
とマリはつぶやいたが、意に反してヤマモトは何もそれについて反応しなかった。
ノーリアクションかい!なんて毒づくことはもちろんない。
ヤマモトはにわかに疲れ切った表情を浮かべていた。

「明日、休んじゃえばいいのに。疲れてるみたいだから」
マリが何気なく発した言葉に、ヤマモトは目からうろこがおちんとばかりに、
一瞬、目を輝かせたが、すぐに現実的な考えを取り戻したようだ。
「そっか。休めばいいのか。そんなこと、ちっとも選択肢の一つとして考えなかったな。
別に年休だって取れるわけだし法律的にはそういうこともありなんだよね。法律的には。
でもやっぱり一般社会通念的には明日、休みをオレがとることは難しいんだよね。
それが現実なんだよ。現実的な選択をしなくっちゃ。法律的ではなくってね」
「その、なんとか的っていうの、口癖なの?」
「うん、すごく便利な言葉だから。いろいろと今の物事を説明するのに重宝するんだ。
多層性のある現実の社会を、自分を一度客観的な立場に引き上げて、
全体を俯瞰する、まあいってみれば空を舞う鳥のような視点に移し変えて、
それからさまざまな角度からその物事に対する考え方を斬っていく時に、
なんとか的なって言葉がとても有効なんだ。自分の頭の中を整理するためにね。
マリちゃんはそういうの、使わない?」
「使うかもしれないし、使わないかもしれない。意識はしてないと思う」
「うん、まあ普通だよ、それが。あんまり女の子がなんとか的なみたいな言い方は、
あまりいい印象を異性に与えないかもしれない。
なんとなくそんな気がするから、使わない方がいいかもしれないね」

マリは何気なくタバコを取り出すと、一本、口にくわえて吸い始めた。
ヤマモトが驚いたような表情をみせたことに、逆にマリが驚いた。
「マ、マリちゃん、タバコ吸うんだ。学生時代は吸わなかったよね」
「うん。吸わなかった」
「じゃあ社会人から吸い始めたの?」
「まあ、そういうこと」
「なんか、きっかけとかあったのかな」
きっかけ。タバコを吸い始めるのにきっかけが必要なのかマリは考えてみた。
確かに何かきっかけがあったはずだけどうまく思い出せない。
もうここに一人で来ていた頃にはタバコは吸っていたと思う。
「ヤマモトくんも吸う?」
「い、いや、オレはいい」
それをきっかけにヤマモトは立ち上がった。
「ごめん、なんだかじゃましたね。明日仕事あるから、もう帰るよ。じゃあ気をつけて」
「うん、じゃあ気をつけて」
ヤマモトは「月の窓辺」を出ていった。



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